コーヒー探訪

英国紳士を虜にしたコーヒーハウスの出現

紅茶文化の国と知られる英国だが、社会に大きく影響を及ぼしたのはコーヒーハウスであった。英国に初めてコーヒーハウスがオープンしたのは1650年。オックスフォードでのこと。パリやウィーンよりも30年以上早いのである。
当時英国は貿易圏を拡大し東南アジアからコーヒーをもたらしたのである。コーヒーハウスは瞬く間に、人気スポットとなった。
理由の一つに、そこでは酒が提供されなかったことが挙げられる。当時は階級に関係なく朝からエールやワインを飲むのが当たり前だった。勤勉とは程遠い有様で健康にも悪い。
そこで初期のコーヒーハウスの店主たちは、コーヒーの効能を訴える広告を打った。ロンドン初のコーヒーハウス「ローズィの店」の宣伝ビラには、消化作用を助ける事、頭の働きを早め、眠気を防ぐこと、痛風にも肺病にも腺病にも効果があるなどと書かれていた。これに飛びつかない人はいないだろう。しかも酒より格段に安い。
店内の雰囲気作りにも心を砕いたことは、壁に貼り出されていた利用規則を見ればわかる。身分にかかわらず誰でも歓迎。他人を口汚い言葉で罵ったりしないこと。賭博は禁止。大声での議論を慎み、静かに語り合うべし。現代のコーヒーハウスにも通じる紳士的なマナーを客達に求めたのだ。
かくして、コーヒーハウスは男達が心地よく過ごせる場所として街に欠かせない存在となった。
老いも若きも、経済人も文化人もスリもスパイも足を運んだというコーヒーハウスの出現である。
この様に誕生したコーヒーハウスだが、その後18世紀に入りジャワでコーヒー栽培に成功したオランダがコーヒー貿易を独占。競争に敗れた英国では高価なコーヒーに代わり紅茶貿易に力を注いだ。このようにしてコーヒーは次第に姿を消した。英国の紅茶文化の誕生である。

1950 年創業の確かな味わい